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横浜市内で営業を続ける「個性的な銭湯」を応援したい。
そんな想いから始まったこの特集では、「神奈川県公衆浴場業生活衛生同業組合」オススメの銭湯を、順次ご紹介していく予定。その第3弾となる今回は、同組合が「若い3代目が古い銭湯を頑張っている」と推す、鶴見区の「矢向湯(やこうゆ)」。
どのような奮闘をしているのだろう。「鶴見区魅力づくりの会」副班長も務める、代表取締役の岩代仁(いわしろ・ひとし)さんに伺った。
-煙突や入口に「天然温泉」と書かれていますね。-
100メートルほどの地下から、冷鉱泉を引いています。かつてこの辺は海だったので、先々代が期待を込めて掘ったところ、温泉の層に当たったようですね。当施設の創業は1967(昭和42)年になるのですが、この場所にはそれ以前から「矢向湯」があったと聞いています。ただし、温泉施設に生まれ変わったのは、祖父の代から。これを、まきで沸かして提供しています。
以前は重油を燃やしていました。工場地帯でしたから、煙突から黒い煙が出ていても、あまり問題ではなかったのです。ところが、肝心の工場が次々とマンションに建て替わるにつれ、住宅地になっていきましたからね。ススが布団に付くような事態は避けないと。
また、内湯の構造も独特だと思います。一般的には、湯船が壁沿いにあって、カランがその手前に配置されていますよね。ウチは逆。壁沿いにカラン、お湯が真ん中です。自分で言うのも変ですが、ユニークというか、ぜいたくな造りなのではないでしょうか。
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-組合から「頑張っている」との声が上がっていましたが?-
私は理科の教員を務めていたことがあるので、その経験を生かして、組合のPR活動を行っています。例えば、風呂おけのケロリンをオリジナルのペーパークラフトやアメにして、地域のお祭りなどで配布しているんですよ。
皆さん、「オケボーリング」って、ご存じですか? 積んだ風呂おけをめがけてお尻で滑っていく遊びのことです。お祭りでは、このボーリングをペーパークラフトと吹き矢で再現し、参加賞としてケロリンアメを用意しました。なかなか好評で、グッズに関しては、県外の人からも問い合わせを頂いています。
-以前は、理科の授業でも、こうしたことを行っていたんですか?-
学校外で、実験教室などを開催していましたね。というのも、私はNPO法人「ガリレオ工房」に所属していまして、滝川理事長を筆頭に、理系嫌いの子どもに興味を持たせる活動を続けています。以前は、でんじろう先生が所属していたので、名前を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。そうした取り組みを同級生が聞きつけまして、「今度、自分の子どもが通っている保育園でもやってほしい」と。そこで、「銭湯のアピールができるなら」という条件付きで、園長先生にご許可いただきました。
-どのような内容だったのでしょう?-
万華鏡づくりなどですね。組合の活動としては、手製の紙芝居を披露しました。「大きなお風呂があるって知ってた?」から始まって、「何にでもルールってあるよね。では、この絵の子どもが守っていないところは、どこでしょう」というような、社会教育を意識した内容にしました。
保育園児からの反応は予想以上で、「あっ、ドロが付いたまま入ってる」といった具合。「よく気付いたね。今度は実際に、銭湯に来てみてね」で締めて、お約束のペーパークラフトを渡す流れです。
ねらいというと大げさですが、子どもが銭湯に興味を持つと、親も「じゃあ、行こうか」という気持ちになると思うんですよ。逆のパターンより、効果があるかもしれない。
それに、以前15人の子どもに「銭湯に行ったことある?」と確かめてみたところ、わずか3人しか手を挙げなかったことがあります。要は、銭湯を知らないんですよ。ならば、そこがチャンスかなと。行ったことのない場所って、子どもにとっては興味津々ですからね。
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-大切にしているものは、ありますか?-
銭湯が「常にある、当たり前にある」ということでしょうか。ですから、正月の三が日のうち2日ぐらいしか休まないようにしています。
以前、こんな出来事があったんですよ。たまたま通りがかった人が、「まだ、残っていたんだ」って、懐かしそうにつぶやかれましてね。私は外に行く機会が少ないので、ビルが取り壊されたり、新しい施設ができたりする場面にはなじみがありません。この建物も、あって当然というのか、少なくとも「残っている」という感覚は薄いんですね。それなのに、いつのまにか「みなさんの記憶の中に残る存在になったんだなぁ」って。
-ご主人にとって、「銭湯」とは?-
うまく言えませんが、「スーパー銭湯よりも、銭湯的なモノ」ですかね。温泉やスーパー銭湯というと、皆さん、「非日常」を求める傾向にあるのではないでしょうか。癒やしだったり、「月に一回のご褒美」だったり・・・。それと同じことを普通の銭湯に望まれても、たちうちできない。
ですから、特別なことではなく、いかに普段使いしていただくかが課題です。そういう意味で、小さいころから慣れ親しんでもらえれば、日常の記憶の中に残りますよね。将来、大人になったときに、「ここ、まだあったんだ」みたいな。
小さい子は、スーパー銭湯に入れない場合がありますから、そこがポイントかもしれません。これからも、試行錯誤しながら、草の根的な試みを続けていくつもりです。
【基本情報】
正式名称/矢向湯
住所/〒230-0001 横浜市鶴見区矢向5-3-19
アクセスJR南武線「矢向」駅より徒歩約4分
TEL/045-581-1153
定休日/不定休
営業時間/14:00~23:30
泉質/ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉
創業/1967(昭和42)年
【料金】
県内共通/大人(12歳以上)470円、中人(6歳以上12歳未満)200円、小人(6歳未満)100円
【設備】
乾式(ドライ)サウナ/電気風呂/寝風呂/歩行浴/ボディーマッサージ/水風呂/駐車場/コインランドリー/貸しタオル
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