宮澤真理さんインタビュー 第2回前編  ― お話の続きはいつも頭の中で繰り広げられている ― 「独創性」と「シズル感」の共存を可能にしたもの

アーティストインタビューVol.6 お弁当・アニメーション作家宮澤真理さん

― 本物のお菓子でできたアニメーション 「Decorations」が世界中を駆け巡るまで ―

 

前回の記事では、宮澤さんのお弁当作家になった経緯や、「Decorations」をはじめ、食品を用いたアニメーション作品が、国際映画祭を中心として、さまざまな場所で上映されることについて触れました。

第1回 (作品の素材は本物の「たべもの」たち。デジタルの分野で実績を積みあげたデザイナー、宮澤真理さんが到達した新境地、「お弁当・アニメーション作家」世界を魅了する良質な作品が生まれる、意外なきっかけとは ― ?)は下記ページでご覧いただけます。 

 http://yokohamaviaggio.net/artistinterview6miyazawamari1

 

今回は、宮澤作品の制作のプロセスを中心にお話を伺いながら、その中で見えてきた、現在の宮澤さんにつながる、独創的でクリエイティブな幼少期についてお伝えいたします。

第2回前編の今回は、(次号5月中旬掲載予定とあわせて)

「なぜ共感を呼び、観る人の心を打つのか」という宮澤作品の魅力にアプローチしてまいります。

 

宮澤真理さん紹介

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1983年日本大学芸術学部美術学科卒業。

2014年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。

2000年までコンピュータゲームのグラフィック制作に従事。2002年から食品でアートを追求するお絵かきお弁当を発表。銀座、梅田で個展開催。2007年よりJ:COMにて食品を使ったショートアニメを公開。

Decorationsで第18回文化庁メディア芸術祭 審査員推薦作品、第31回シカゴ国際子ども映画祭 子供アニメーション部門グランプリ、トロント国際子供映画祭2015 最優秀短編アニメーション賞などを受賞。

活動歴・実績

http://www.e-obento.com/activity

「Decorations」受賞・上映歴

http://www.e-obento.com/decorations/%E5%85%A5%E8%B3%9E%E3%83%BB%E4%B8%8A%E6%98%A0-award-screening/

「Twins in Bakery」受賞・上映歴

http://www.e-obento.com/twinsinbakery/award-screening

公式ウェブサイト 「e-お弁当作っちゃいました!」

http://www.e-obento.com/

※)下記画像の数々は宮澤さんからお預かりした「Decorations」スチールおよび、お弁当シリーズです。全4回の記事掲載の中で、引き続きたくさんのお弁当シリーズ画像を掲載させていただく予定ですので、お楽しみにしてください。

 

宮澤真理さんインタビュー 第2話

― お話の続きは、いつも頭の中で繰り広げられている ―

 

「独創性」と「シズル感」の共存を可能にしたもの

 

宮澤さん:お弁当の仕事でご一緒させていただく方などから、言われることがあるんです。

「よくネタに困りませんね。」って。

私の感覚としては、仕事を依頼されたり、続編があったりした場合、そのタイミングで新たに1から考え始めるとか、そういうものとは違うんです。たとえば、あるキャラクターたちやお話の世界がいったん出来上がると、時に何本も私の頭の中でストーリーがどんどん繰り広げられていく感覚です。

キャラクターもストーリーも止まっていないんです。

 

「あの時のお話の続きは、こうなったのね。」とか、「あのキャラクターがそこで登場するわけか!」、というようなコメントいただいたりすることがありますが、つまりはそういうことです。

わざわざ作品の展開を、必要に応じてその都度作っている感覚ではなくて、私の中で一度生まれた世界やキャラクターたちは、私の中に息づき、止まることなくストーリーを展開していきます。

だから、3か月後には、こんな感じ。前に撮った撮影のシーンの続きはこうなっている。というようなことを考えるのではなくて、

「今日は、あの子たちはどうしているのかな?」と思い描いた様子をそのまま表現する感じなんです。

 

盛島:そういうことなんですか・・・。見ている側もますます楽しくなりますね。

作者の中でリアルに息づいていることを作品として鑑賞できるなんて。そういう部分も、人を惹きつける理由の一つなのかもしれませんね。

ところで、宮澤さんご本人はどう感じていらっしゃいますか?宮澤さんの作品が世界中で受け入れられ、人を魅了する要素は、ズバリ、どこらへんにあると思われますか?

 

宮澤さん: ありがたいですね、本当に。

たとえば、ウィンナーとか、生クリームとか、私の作品の中のキャラクターたちは、実物の食品を使ったり、食べられる物で表現して物語を展開していますが、世界中の人たちが、映像を見て、その食品の持つ実際の重さや質感を具体的にイメージできるところが、大きいのかなと感じます。国を問わず、日常的に目にしたり、普段食しているような、共通認識の高い食品だったりすることが、多かったのかもしれません。

それで、共感を得られたのではないかな、と感じます。

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またフェスティバルのディレクター同士の情報交換で、次から次へと映画祭の上映が決まっていった。

つまり映画祭で上映させていただくようになったのは、口コミで広がったところが大きく、どちらかというと、私の元を離れて作品が独り歩きした、という感があります。

このような経緯も追い風になりました。本当にありがたいことです。

 

盛島:宮澤さんの育った環境や、日常に感じる、何気ない動植物のある風景などは、作品にも影響していますか?

 

宮澤さん:影響していると思います。たとえば「シズル感」。美味しそう、というのはもちろん、匂いや温かさが伝わる、という感覚ってとっても大切なんですよ。

でも時にアニメーションでシズル感を出すのに、食品をそっくりまねて作ったり、表現してもおいしく見えなかったりします。

細かく細密にやっていけばいいかというと、私はそうは思わない。

採れる時期により変わる野菜の感じとか、きぬさやのカーブとか。

その時々、収穫の時期でも色味や、風合いは違います。

私は仕事を重ねながら、そういう感覚を体得してきたことももちろんありますが、もしかしたら、それ以前に、生まれ育った環境の中で、何気なく見て触れていたものに、感覚を磨いてもらった、というところが大きいのかもしれません。

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盛島:ご出身はどちらですか?どのような環境で育ったのでしょうか。

 

宮澤さん:長野県です。私の育った場所は、本当に田舎ですね。東急ハンズもデパートも何もない、、、野山を駆け巡る、という言葉がぴったりの、自然に囲まれたところで育ちました。今は東急ハンズがないと生きていけないんですけど。(笑)

 

こどものころは自然がふんだんにあり、何も気にせずそれが当たり前に暮らしていたんですけど。

でも今になって改めて、植物とか好きだなあと思ったり、小さいころに体験した自然や、四季折々の風景を懐かしく感じたりもします。それが今の私の作品につながっていると思います。

 

盛島:実際にどのようなお子さんだったと思いますか?

 

宮澤さん:みんなで遊びまわる、というよりは、1人でもくもくと何かを作って遊ぶような。振り返ってみると、とても独創的でマイペースな子どもでしたね。絵を描くことや、細々としたものを好んで作ったりしていました。とにかくいろんなものを作りました。その逆で、出来ているものを破壊したり、、、も、していました。(笑)分解して仕組みを見る、という意味です。(笑)そんな感じでした。

 

盛島:独創的な部分として、何かエピソードなどはありますか?

 

宮澤さん:たとえば、「庭に水をまいて来て」って親に言われると、2時間くらい帰ってこなかったそうです。

何をしていたかというと、庭に水を撒くのではなく、植物のない地面に、ジョローの水で絵をかいている。私はよく覚えていなんですが、大人になって、その類いの思い出話を、親がよくしてくれました。

そういう話がたくさんあって、冬の時期には雪かきバージョンです。

ある日私はスコップを渡され「雪かきをして来て」、と言われました。そうすると今度は半日帰ってこない。

親が「一体あの子は何をしているんだろう?」としびれをきらせて覗きにくる。すると庭には、立派なかまくらが出来上がっている。ようは雪かきをして雪がなくなっているのではなく、逆に雪が積まれていたんだそうです。

それも普通のかまくらではない。びっしりと城壁に囲まれた雪のお城です。

そしてそのお城の向こう側には、汗をかきながら、真剣に雪を固めている私がいたそうです。

 

盛島:ご両親は宮澤さんのような、芸術的なご職業だったんでしょうか・・・?

 

宮澤さん:いいえ。でも忙しい家庭に育ち、1人でいる時間用に、画集など買い与えてもらっていました。私は大好きで何時間でも画集を見ていられました。

 

ちなみに親が与えてくれるものは、子ども向けでないものがほとんどでした。画集の他にも、普通子どもには理解できないであろう、手芸の本なども含まれていました。大人用ですね。わからないけれど、写真が美しく、図面がたくさんありました。そのような物を多く見ていたのです。

作り方がわからなくても、それをずーっと繰り返し見ていました。

読んでいるのでなく、わからないながらも、図面をひたすら眺めている感覚ですね。何年も何年も、飽きずに見続けていました。

そしてあるとき、急に作り始めたりしました。

覚えているのは、手芸の本に載っていたものを、そのまま作るのではなく、本の中のあるページに記された、部分部分のパーツをそれぞれ作って、自分の作りたいものに応用していく。というようなことをしていました。

 

こんなこともありました。

母のネグリジェの裾のひらひらが何ともきれいで、それを別のものに作り替えたくなり、

私は「これちょうだい。」を繰り返しました。

あんまりねだる私を見て、母は「まだ小さいのに、この子はこういうのが好きなのね。女の子らしいわね。」と思って、渡したそうです。

そしたらなんと私は、おもむろにはさみを持ち出し、受け取ったネグリジェの裾をザクザクと切り始めたのです。母はそれはそれはびっくりしたそうです。

 

ようするに、ネグリジェが欲しかったのでも再現したかったのでもなく、そのネグリジェの裾のひらひらを使って、別のものを作りたかったのです。何を作ったのかはもう覚えていないんですが。

 

その当時から夢中になると時間を忘れ、とにかく始めたら、完成するまで止めない、というような、創作スタイルでした。

 

母が不思議がっていましたが、私はつたいながらも、ラフを描き、その通りに完成さていたのだそうです。

見ている方としては、どこをどうやって完成に向かうのか不思議でならないし、ラフとそっくりに完成することに驚いていたようです。

また私は参考にする本があっても、その通りやらない。部分部分のページの内容を作って、それらをつなぎ合わせて、自分なりの作品を作る。そういう一風変わったところがありました。

 

宮澤さんの幼少期は、まさに独創的でクリエイティブですね。

インタビューから、宮澤さんの幼少期に育まれた感性や、「創る」ことにつながる日常の様子が、いきいきと伝わってきました。現在の宮澤さんを裏付けているというべき、素敵なエピソードを伺うことが出来ました。

第2回後編では、アニメーションやお弁当シリーズの制作を通じて、いかに「シズル感」を表現するかについて、そのこだわりや思い、緻密な作業の数々について、お話いただいた内容をお伝えしていきます。

 

 

次回予告 (2016年5月中旬掲載予定)

第2回後編 テーマ

「独創性」と「シズル感」の共存を可能にしたもの

     ― 温度や匂いまでもが伝わってきそうな「シズル感」を生み出しているもの ―

お楽しみに。

 

 

 

Post Author: staff_01