「横浜Viaggio第4回アーティストインタビュー」SCHOLE inc.代表取締役兼アートディレクター菊地慎氏

「横浜Viaggio第4回アーティストインタビュー」

PAGE 4: Autumn2014

SCHOLE inc.代表取締役兼アートディレクター菊地慎氏

 

 

kikuchi7

菊地慎(きくち・しん)

1985年生まれ、神奈川県横浜市出身。SCHOLE INC. 代表取締役兼アートディレクター。

大学在学中よりインディペンデント音楽レーベル『SCHOLE RECORDS』を運営し始める。大学卒業後、株式会社SCHOLEを設立、代表に就任。写真、映像、WEB、デザイン、などを独学で学びつつ、SCHOLEでは音楽を中心に事業を展開。代表作、クエンティン・サージャク「Piano Memories」、小瀬村晶「How My Heart Sings」「.que]「BRILLIANT HOPES」。ほか、フォトブック2作を発表している。

kikuchi1

同社作品例   「Tiny Music(左上)」「grassland(左下)」「How My Heart Sings(右)」 アーティストはいずれも、小瀬村晶

 

目で見ることのできない音を、どのようにすれば視覚的なイメージで表現できるのか。

私たちが日ごろから何気なく接している「CDジャケット」には、そうしたミュージシャンの想いや葛藤が込められている。そのイメージを共有し、形のあるモノへ紡ぎだしていくのが、レーベル会社の仕事である。

そこには、作品でありながらも、自己を投影しない「代弁者」という要素が含まれる。なぜなら、リスナーが求めているのは音楽であり、グラフィックではないからだ。

 

レーベル制作を手がける「SCHOLE」が目指すのは、デザインによるコミョニケーション。その若き代表取締役でありアートディレクターを務める菊地慎氏に、設立8年目の現状と今後の抱負を取材した。

 

原石を発掘し、驚かせたい

知られていない音楽を提案する魅力に取り付かれて

Q) 学生時代からプロモート活動をされているそうですが、きっかけは何だったのでしょう?

A) 『schole』というフリーマガジンの立ち上げになるでしょうか。当時は、「MySpace」という音楽をテーマにしたソーシャル・ネットワーキング・サービスが全盛期を迎え、世界中にいるアーティストの卵たちが、自分の曲を熱心に公開していたのです。私は学生でお金がなかったこともあり、「MySpace」を使って音楽をたくさん聴いていました。

彼らの作品に接して思ったのは、「こんなにいい音楽が身近なところにあるのに、誰もその存在を知らない」ということ。そこで、アーティストや曲を紹介するメディアを創ろうとしたのが、きっかけですね。

kikuchi2 すべてはここから始まった、フリーペーパー『schole

Q) 創刊に際して、何か特別な勉強などはされたのですか?

A) ほとんどしていなかったですね。メディア学科に在籍していたので、雑誌やテレビに興味ある友人が多く、その点では助かりました。また、新聞系のゼミに所属していたので、校内の広報誌を作るときに取材をする機会があったのです。それがきっかけで興味を持つようになり、一眼レフカメラを買うことに。「だったら、撮影は菊地だな」と、そんなノリですべてが決まっていきました。

本格的な勉強をはじめたのは後になってからで、ウェブ雑誌のアシスタントカメラマンや、フリーでウェブや映像を作っている方の手伝いなどをしながら、技術的なことを身につけました。

 

Q) タイトルになった『schole』という言葉について教えて下さい。

A) ギリシヤ語で「余暇」を意味するそうで、スクールの語源という話を聞いたことがあります。今では余暇というと、レジャーやオフタイムのようなイメージがありますが、本来はそうした時間に教養を身につけていたようですね。音楽も一緒で、自由な時間から自由な精神が芽生え、良い作品が生まれると思っています。

 

 

音楽がなくても、人は生きていくことができるだろう

でも、生活の中にSCHOLEがあれば、心がきっと豊かになるはず

Q) ジャケット制作を手がける上で、ポリシーのようなものはありますか?

A) 自分のポリシーや作風を出さないようにするのが、あえていえばポリシーになるでしょうか。それでも私は不器用ですし、できる事も限られているので、「個性がにじみ出ているかな」と感じる場面もあるんですよ。そうしたさまざまな結果が「SCHOLEっぽく」なっていればいいなと思っています。本当に素人からスタートしたので、逆に、自分やSCHOLEの成長・成熟がジャケットに表れていってもいいのかなと。

また、「音楽家のビジョンに近づける」ということも大切にしています。音は目に見えませんから、視覚的なイメージを伝える「ジャケット」の役割は大きいはず。どうしたら音楽の雰囲気がうまく伝えられるのか。デザインの目的のひとつは、コミュニケーションですよね。

 

Q) 具体的に一例を挙げてもらってもいいですか?

A) では、フランスのピアニストであるクエンティン・サージャクのジャケット、「Piano Memories」を例に取りましょうか。

彼から最初に見せてもらったのは、ピアノのmidiデータでした。これを使って何かできないかという相談が、そもそものスタートです。最初は写真を使った案を考えていたのですが、なかなかクエンティンのイメージと一致しませんでした。そのデータを見ているうちに、「ピアノの黒鍵と白鍵から生まれた音が弦を震わせ、聴く人の心の奥底へ、さまざまな記憶を呼び起こしながら降りてゆく」、そんなイメージが浮かんできました。そこで、このジャケットでは写真を使わず、あえてシンプルなグラフィックでまとめてみることに。記憶の中に眠る風景が曲ごとに呼び起こされ、聴く人が思い描いたものがジャケットになればいいと思ったので、裏面は何も書かず真っ白にしました。

後でクエンティン本人にアルバムの解説をしてもらったら、ちょうど同じようなことを言っていて、「イメージの共有ができたのだな」と実感しました。そこで、勝手に動画も作らせてもらったんですよ。やはり音楽家とのイメージが共有できたときには、映像でもジャケットでも、驚くほどスムーズにできあがるものなんですね。

kikuchi3 kikuchi4

クエンティン・サージャク「Piano Memories」             音楽が流れる風景をイメージすることが多い菊地氏

Q) 菊地さんにとって「音楽」とは?

 A) 「心を豊かにする存在」ですね。音楽が流れていれば、会話がなくても成り立つ環境や関係性が存在しますし、仕事のヒントが見えてくることもあります。そこには、何かしらの漂っているモノがあるはずなんです。このつかみきれないあやふやな存在は、生きていくために必要のないモノかもしれませんが、かといって切り捨てられるモノでもない。生活の質を上げてくれることは確かですし、余暇にも通じますからね。これからも、誰かの日常空間の中にSCHOLEがあればと願って、活動を続けていきます。

 

人生は、ブロックのようなもの

20代で集めたパーツを、30代で形のあるものに

Q) 個人的なことも伺いたいのですが、どのような子ども時代だったのでしょう?

A) LEGO大好き少年でした。両親が何かにつけてプレゼントしてくれましたので、衣装ケースに何箱もたまっていきましたね。最初は、セットの内容にしたがって組み立てていくのですが、一度バラして箱に入れちゃうと区別が付かない。必要なパーツが見つからないので、そこからは創作活動になるわけです。LEGOには、ジオラマのような土台が付いていましたから、イメージが膨らむんですよね。もともとは潜水艦の背景だったところに「海底基地を作ろう」とか。音楽というパーツがあってまだ見ぬ何かを作るという点では、ジャケット制作に似ているところがあるかもしれません。

 kikuchi5

菊地さんご自身のフォトブック『syn crho

 

  1. Q) SCHOLEのメンバーである、小瀬村晶さんと齋藤雄磨さんについて一言

 

  1. A) 音楽プロデューサーの小瀬村は、堅実でしっかりしていて、良き相談相手です。くだらない内容でも、私が「いいことを思いついた」と投げかけると、「だったら、こうすれば」が返ってくる。ですから、アイデアがより膨らみ、具現化されるのです。私たちは経験が少ない反面、失敗によって得るものは大きいと考えています。20代のうちに、思いついたことを失敗しながらも改善し、それを繰り返して形にする。とりあえずその力をつけたいと思って、お話できないような経験をたくさん積み重ねてきました。

映像作家の齋藤は、デザインソフトの操作方法や映像ソフトのことを教えてくれる友人で、明るくてカラっとした性格です。私が骨で、小瀬村が筋肉だとしたら、これらを動かすエネルギーのような存在ですね。ただ、SCHOLEとして映像事業にまで手を伸ばすには経験も技術も足りないので、今はお互いに修行を重ねながら、次のステップに必要な力をためているといったところです。

えっ、私ですか? 楽天家というか、迷ったら後先考えずに楽しい方向を目指す性格かな。大学の卒業を控えていたころ、忙しかったということもありますが、就職活動は一切しなかったんです。「自分で考えて何かやってみた方が楽しそうだ、失敗してもまだ若いからなんとかなるだろう」と、踏み切りましたからね。

 

  1. Q) 最後に、これからの抱負をお願いします

 

  1. A) 毎年何でもいいので、アイデアや思いついたことがあったら挑戦して形にしていきたいですね。今年始めたのは、著作権や原盤権を管理する音楽出版事業です。リリースした作品に関して「責任を持って管理したい」と思っていた点もありますが、アーティストへの支援にもなりますし、何より一括して扱えること自体が、小規模な会社にとって大きな強みになるはずです。もちろん音楽が使われるさまざまな状況への対応を学ばなければなりませんが、20代のうちは、とりあえずいろいろなパーツを集めようと考えています。それを元に取捨選択をし、成熟させて組み立てていくのが、30代の目標になるでしょうか。

 

そんな私たちですが、もし「おもしろそうだな」と思ったら、1度作品を聴いてみてください。SCHOLEの音楽を感じ取っていただければ、うれしい限りです。

 

 

SCHOLE INC.

http://schole-inc.com

 

Shin Kikuchi

http://www.shinkikuchi.com

Post Author: staff_01