横浜Viaggio第2回アーティストインタビュー 水谷美月氏

PAGE 2:Autumn 2014

バイオリニスト・歌手 水谷美月氏

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水谷美月(みずたに・みずき)

大分県出身。フリーランスとして活動を続けるバイオリニスト兼ボーカリスト。

小学校2年生のときからバイオリンを習い始め、2000年、水谷豊主演の舞台オーディションに合格したのを機に、本格的な芸能活動へ。現在、「東京ヴァイオリン」、ゲーム音楽プロオーケストラ「JAGMO(ジャグモ)」のメンバー。2014年に行われた加山雄三の武道館ライブでは、ソロバイオリニストとして参加している。

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中目黒にあるカフェ、「L’hirondelle(リロンデル)」にて インタビューに応じる水谷美月さん

 

バイオリンの音色を「自分にとって第二の声」と話す、水谷美月さん。

いま彼女が目指しているのは、幼少時から習い続けていたクラシックではなく、アイリッシュ音楽をベースにした「ロックとポップスの融合」。激しい情熱を表現する一方で、「渓流を照らす月」のようなトーンも感じてほしいと、自らの名前にその想いを重ねる。

水谷さんの話を伺っていると、「調べ」という言葉が連想される。それは、各バンドメンバー間を取り持つ「調和」、音の「調律」、個性の「強調」、リズムの「調整」などへと通じる。

来年2月には、新たに結成したグループ「ラトリン・ロアリン・ウィリー」から、初となるアルバムがリリースされる予定。改めて、現在の心境に触れてみた。

クラシックは「流れ」、ロックやポップスは「拍(はく)」

同じ音楽でも、リズムの合わせ方が違う

Q) 現在、バイオリンを軸にバンド活動をされていますが、きっかけは何だったのでしょう?

A) もともとは、クラシックバイオリンを習っていたんですよ。あれは、水谷豊さんが主演した舞台、『陽のあたる教室』の稽古をしていたときかな。バイオリンを演奏する生徒の役で出演していたのですが、なぜか楽屋裏で「バンドやらない?」と声をかけられまして。そのときサンプルとして渡されたのが、アイルランド出身のフォーク・ロック・バンド「The Corrs (ザ・コアーズ)」のCDでした。伝統的なケルト・サウンドなのにポップスで、しかもバイオリンが入っている。私にとって、初めての経験でしたね。

Q) それまで続けていたクラシックとのギャップはなかったのですか?

A) ありましたね。コンサートやオーケストラには参加していたので、ほかの演奏者に合わせることには抵抗感がなかったんですよ。むしろ、自信を持っていました。ところが、クラシックは全体の「流れ」でリズムを捉えるのに対して、ポップスはドラムの「拍」に合わせていく感覚。音楽の質が違うというのかな、頭で分かっていても、体が反応しないんですね。メンバーから何度も、「録音テープを聞き直して、リズムを整えて」と言われましたが、気が落ち込むので、再生するのが怖かったことを思い出します。

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「アイリッシュ音楽が私の原点」 そのきっかけは、 偶然の出会いだった
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偶然の出会いだった

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「あれ? 何で合わないの?」 当時は、そんな毎日が続いていたという
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Q) 演奏だけではなく、ボーカルも担当していますよね?

A) 歌は、2009年に行われた「浅草JAZZコンテスト」へ応募したのがきっかけで、本格的に始めることになりました。実は、大会の内容をよく理解しないままエントリーしてしまったのです。祖父が浅草生まれという、ただそれだけの理由で「えーい、申し込んじゃえ」って。それに当日、審査員長から、「君、それジャズじゃないよね」と言われたので、ダメだと思っていたんです。なのに、たまたま「ボーカル部門」の金賞を頂くことになりまして。歌には歌なりの、バイオリンでは表現できない難しさがあります。そのことに気付かされた、私にとって大きな意味を持つターニングポイントです。

 

曽祖父から続く、バイオリニストの血統

後から知らせるなんて、「オトナって、ずるい」

Q) そもそも、どうしてバイオリンを習い始めたのでしょう?

A) 「スズキ・メソード」で知られる公益社団法人才能教育研究会に入ったのがきっかけです。同会では年に一度、生徒による武道館コンサートを開催していて、母親と一緒に聴きに行ったことがあるんです。小学校1年生のころかな。そこで気に入ってしまったのがバイオリン。「あの楽器のあの音がやりたい」と1年間言い続けて、やっとプレゼントしてもらいました。これは後で聞いたことですが、私の曽祖父は、バイオリンの先生だったようです。父親も直接習っていたのですが、途中で文字通り投げ出したらしくて、それを修理したのが最初の一台。どうせなら、そのとき言ってくれれば良かったのに。大人って、ずるいですよね。

バイオリンが彼女を呼んでいたのか、 不思議な運命が、後の人生を大きく左右していく
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Q) その後、印象に残っている出来事があれば、教えてください。

A) 才能教育研究会では、コンサートとは別に、夏季学校を開催していました。同会の本部が長野県の松本市にあるので、5日間ほど泊まり込みで講習を受けるのですが、そこにいた「大きいお兄さん」のなかに、後々の師匠となる桐山建志(きりやま・たけし)さんがいらっしゃいましたね。ほか、印象的なことといえば、先ほどお話した『陽のあたる教室』でしょうか。実はそのころ、司法試験を受けようと、ダブルスクールに通っていたんです。勉強ばかりだとつまらないので、オーディションでも受けてみようと思ったのがきっかけ。ちょうど司法試験の前の月で、舞台稽古と合わせると、トリプルスクール状態でした。

 

「試験勉強をしていると、よく監督に怒られました」 意外な一面をのぞかせる美月さん
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意外な一面をのぞかせる美月さん

 

 

Q) 本格的にライブ活動を開始したのは、いつごろなのでしょう?

A) 「藤みさき+」や「jdkBAND」の一員に加えていただいたこともありますが、自分で「美月バンド」を始めたのは、2008年ごろからですかね。ボーカルで歌うようになったのは「浅草JAZZコンテスト」以降ですから、ここ5年ぐらいの話になります。今回結成したユニット、「ラトリン・ロアリン・ウィリー」のメンバーと知り合ったのも、ちょうどそのころ。恵比寿にあるライブ会場で、「バイオリンと歌をやるって、すごいですね」と声をかけてきたのが、角田さんでした。その後、楽屋や飲み会などでご一緒することが多くなり、いまのメンバーが加わっていった形です。

 

 

 

「静と動」を兼ね備える、バイオリンの臨場感

サウンドの新しい方向性を感じ取ってほしい

Q) 曲のなかで、バイオリンのこういうところを聴いて欲しいという想いはありますか?

A) 「ラトリン・ロアリン・ウィリー」が目指しているのは、アイリッシュが変化したロック・ポップス。バイオリンの音色から、異国の情緒や普通とは違った雰囲気など、いろいろなことを感じてほしいですね。それに、バンドの音楽って「迫力ダーン」じゃないですか。そのなかで、「透き通ったきれいな水」のようなイメージが描ければ、それが「水谷」なのかなと。ただ、時には「火」にもなりますよ。全体を支えるというのか、「おぉ、下でメラメラ燃えている」みたいな。

渓谷の川面に浮かぶ照月 水谷美月の名前に、アイルランドの原風景が重なる
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Q) 最後に、ファンへ向けたメッセージをお願いします。

A)このバンドを通して、いろいろな人に出会いたいですね。震災に遭った東北地方の方々にも、直接曲を届けたいです。アイリッシュというテーマにはこだわっていないので、三味線とコラボしたら、おもしろいかも。

それと、おいしいものを食べるのが好きなので、東北の海の幸にも興味津々です。ほか、趣味といえば、お風呂と読書かな。少し前は遠藤周作さんでしたが、最近は三浦しをんさん。本に限らずノージャンルですので、近くで見かけたら、気軽に声をかけてください。

 

「タルトとカフェラテが大好き」 ひとりの女性に戻った瞬間
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ひとりの女性に戻った瞬間

オフィシャルブログ「水谷美月の思いつき日記」
http://ameblo.jp/violin-voice/

◆今回のロケでお世話になった場所
中目黒「L’Hirondelle(リロンデル)」
http://www.lhirondelle.jp/

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「空間がテーマ」と話す、鈴木愛(すずき・めぐみ)さんがオーナーを務めるカフェ。地中海をテーマにした店内には、アンティーク家具が並び、ちょっとした集まりやライブに便利。手作りジャムや焼き菓子などの豊富なメニューに加え、ランチの「グリーンカレー(800円)」が大人気。独自の「グラスキープ」サービスもユニーク。

住所/東京都目黒区 青葉台1-27-11 SEVEN VILLAGE 3、4F

Tel/03-6303-0963

定休日/月曜日

営業時間/11:00~23:00

Post Author: yokohama_viaggio